尾去沢鉱山での鉱石の採掘方法や伝説などご紹介いたします。
鉱石から金属へ
坑道より運び出された鉱石は、選鉱場へ送られます。選鉱場は、鉱石の中に1%程度しか含まれていない銅分を25%程度まで濃縮する工場です。送られてきた鉱石は、まずクラッシャーにより砕かれます。
砕かれて粒度のそろった鉱石は、粉砕の工程に送られます。粉砕は、回転するボールミルと呼ばれる機械に入れられ粉砕されます。
このボールミルの中には鋼鉄の玉が入っており、この玉で鉱石を砕きます。
粉砕された鉱石は、鉱石のみを浮かせて採る浮選工程に送られます。浮選工程では、泡に鉱石を付着させ硫化鉱物を取り出し、使用する薬品の違いによって黄鉄鉱と銅鉱物とを分離します。
この工程で濃集された銅鉱石はフィルターを使って脱水され「銅精鉱」となります。「銅精鉱」は、製錬所へ送られ溶かされ粗銅が作られます。
これを電解工程で電気銅にし最終製品となります。
坑道の掘り方
シュリンケージ採掘法
坑道(トンネル)には、最初鉱脈に向かって掘る坑道(立入という)と鉱脈に逢着した後鉱脈に沿って掘る坑道とがあります。また、坑道は深さ30m間隔で掘られていますが、上の坑道と30m下の坑道で同じ鉱脈を確認しますと、下の坑道より脈に沿って上向きに坑道を掘ります。
これで鉱脈の3面(上下横)が確認されますが、確認された坑道で、脈の幅や品位(銅の含有率)を調査した後、その区画の鉱石の量や銅の含有量を推定し採掘に着手します。
採掘は、削岩機により直径2cm、深さ1.0~1.8m程度の孔を数多くを掘り、これに火薬をつめ同時に爆発(発破という)させて鉱石を採取します。火薬としてはダイナマイトが使われますが、昭和40年代からは安価な硝安爆薬(ANFOという)も使われました。火薬への点火は導火線が用いられましたが昭和30年代からは電気発破が主流となりました。
採掘された鉱石は、坑道の下部より抜き取られ、鉱車に積み込み立坑へ運ばれます。立鉱では鉱車を1台ごとにエレベータ(ケージという)で巻揚げ通洞坑を経由して坑外の選鉱場へ送られました。鉱車の牽引には、主に蓄電池式の機関車が使用されましたが、多くの鉱車を牽引する場合には、電気機関車も使用されています。
採掘跡は通常岩盤の崩壊を防止するため坑内で掘られた岩石(ズリという)を充填しますが、尾去沢鉱山の場合岩盤が堅固であったことから、シュリンケージ採掘法と呼ばれる採掘方法が採用され、採掘跡がそのまま残されました。現在観光坑道で見ることの出来る採掘跡は、このようにして出来たものです。